100年動くからだラボ

筋肉・神経・痛みの基礎

慢性痛はなぜ続く?筋肉・神経・動きの視点でやさしく解説

公開:2026年6月24日 約9分 根拠レベル:中

この記事でわかること

  • 痛みの強さは、組織の傷の大きさと必ずしも一致しないこと
  • 慢性痛が続く背景に、神経の感じ方・動かさないこと・睡眠や生活が関わること
  • 早めに医療機関へ相談したほうがよい「受診の目安」

監修:長野圭佑 (柔道整復師・鍼灸師 / からだ鍼灸整骨院)

専門家の確認を経て公開しています。 編集:100年動くからだラボ編集部

膝や肩のこわばりが、なんだか長く続いている。湿布や安静で少し和らいでも、すっきりしない——。年齢を重ねると、こうした「長引く痛み」と付き合っている方は少なくありません。

長く続く痛みは、つらいだけでなく「この痛みは一生このままなのだろうか」という不安にもつながりやすいものです。この記事では、慢性的な痛みがなぜ続きやすいのかを、筋肉・神経・動き、そして睡眠や生活の視点から、やさしく整理します。なお、ここで紹介するのは一般的な情報であり、診断や治療を行うものではありません。気になる症状があるときは、自己判断せず専門家にご相談ください。

まず結論:痛みの強さ=傷の大きさ、とは限りません

長く続く痛みについて、いま国際的に共有されている考え方の中心は、次のひとことに近いものです。

痛みの強さは、組織の傷の大きさと必ずしも一致しません。

国際疼痛学会(IASP)の痛みのとらえ方では、痛みは「組織の傷の知らせ」であると同時に、脳と神経が「これは危険かどうか」を判断して生み出す体験だと整理されています。だから、検査で大きな異常が見つからなくても痛みは起こり得ますし、傷自体が落ち着いたあとも痛みが続くことがあります。

そして慢性的な痛みが続く背景には、ひとつの原因ではなく、神経の感じ方の変化/動かさないことによる体力やしなやかさの低下/睡眠・気分・生活の状況などが、いくつも重なっていると考えられています。「年齢のせい」だけでもありません。

だからこそ、痛む場所だけに注目するのではなく、からだ全体と暮らしを見ながら、無理のない範囲で動きを取り戻していくことが、回復を支えると考えられています。

そもそも「慢性痛」とは?

痛みは、続く期間によって大きく二つに分けて考えられています。

  • 急性の痛み:ケガや炎症など、いま起きている危険を知らせる「アラーム」のような痛み。
  • 慢性の痛み:一般に、3か月以上続く痛み(IASP・ICD-11 の考え方)。アラームが、必要以上に鳴り続けている状態に近いと言われます。

つまり慢性痛は、「治りきっていないから痛い」とは限らず、痛みを感じる仕組みそのものが変化して続いていることもある、ということです。

続く理由①:神経・脳の「痛みの感じ方」が変わる

痛みが長く続くと、神経や脳が痛みの信号に敏感になりやすいことが報告されています(中枢性感作)。

これは、火災報知器の感度が上がりすぎて、煙が少なくても大きく鳴ってしまうような状態にたとえられます。その結果、本来なら痛くないくらいの軽い刺激でも痛く感じたり、痛む範囲が広がったように感じたりすることがあります。

大切なのは、これは「気のせい」でも「大げさ」でもなく、からだに備わった仕組みの変化だということです。仕組みを知っておくだけでも、過度な不安がやわらぐ助けになると考えられています。

検査で「異常なし」と言われたのに痛い、という経験をされた方もいます。これについては、別の記事でくわしく取り上げます。

続く理由②:動かさないことで起きる悪循環

痛いと、つい体を動かさなくなります。これは自然な反応ですが、長く続くと次のような循環に入りやすくなります。

  • 痛い → 動かさない
  • 動かさない → 筋力・柔軟性・体力が少しずつ低下する
  • 少し動くだけでつらく感じる → ますます動かさなくなる

国際的な腰の痛みの研究(医学誌 Lancet の2018年シリーズ)でも、過度の安静よりも、無理のない範囲で動き続けることが回復を支えると整理されています。痛みへの不安から動きを避けすぎてしまうことも、長引きに関わると考えられています。

もちろん、痛みが強いときに無理は禁物です。「まったく動かさない」でも「我慢して頑張る」でもなく、痛みと相談しながら、少しずつが基本の考え方です。

続く理由③:睡眠・気分・生活の状況

痛みは、体の状態だけで決まるわけではありません。

  • 睡眠:睡眠の乱れと痛みは、互いに影響し合うと報告されています。眠れないと痛みを感じやすくなり、痛みで眠れない、という循環が起きることがあります(睡眠と痛みの関係は別の記事でも取り上げます)。
  • 気分・ストレス:不安や気分の落ち込みが続くと、痛みを強く感じやすくなることがあります。
  • 生活全体:仕事や家事の負担、姿勢や動き方のクセなども関わります。

このように、痛みをからだ・こころ・生活の複数の面から見る考え方は、「生物・心理・社会モデル」と呼ばれ、慢性痛をとらえる土台として国際的に共有されています。

では、どう向き合うとよい?(一般的な考え方)

痛みの感じ方には個人差があり、「これをすれば必ず楽になる」と言えるものではありません。そのうえで、一般的に大切とされている考え方を整理します。

  • 痛む場所だけを見ない。 神経の感じ方、動き、睡眠、気分、生活までふくめて見直す。
  • 過度な安静を避け、少しずつ動く。 痛みと相談しながら、できる範囲から動きを取り戻していく。
  • 痛みの仕組みを知る。 仕組みを理解すること自体が、過度な不安をやわらげる助けになると考えられています。
  • 一人で抱え込まない。 長引く痛みは、専門家と一緒に向き合う方が、見通しを立てやすくなります。

年齢を重ねてからでも、今からできる工夫はあります。「年齢のせいだから仕方ない」とあきらめる前に、できることから見直してみる価値はあります。

受診の目安(こんなときは医療機関へ)

慢性痛の多くは命に関わるものではありませんが、なかには早めに医療機関で相談したほうがよいサインもあります。次のような場合は、自己判断せず受診してください。

  • 強い痛みが続く、または急に悪化した
  • 痛みがだんだん強くなる、夜眠れないほど痛む
  • 手足のしびれや、力が入りにくい・感覚の異常が広がる
  • 排尿・排便のトラブルをともなう
  • 発熱や、原因のわからない体重減少をともなう
  • 強くぶつけた・転んだなど、ケガのあとから痛む
  • がんなどの大きな病気の治療を受けた経験がある

これらは、痛みの裏に別の原因がかくれている可能性を確かめるためのサインです。当てはまるときは、整形外科などの医療機関にご相談ください。

痛みやしびれが強い、長く続く、急に悪化したなどの場合は、自己判断せず、医療機関や専門家にご相談ください。

まとめ

長く続く痛みについて、覚えておきたい点をふり返ります。

  • 痛みの強さは、傷の大きさと必ずしも一致しません
  • 慢性痛が続く背景には、神経の感じ方の変化・動かさないことによる体力低下・睡眠や気分・生活などが重なっていると考えられています。
  • 痛む場所だけでなく、からだ全体と暮らしを見て、無理のない範囲で動きを取り戻すことが、回復を支えると考えられています。
  • いっぽうで、上にあげた受診の目安にあてはまるときは、早めに医療機関へ。

痛みの感じ方には個人差があります。完璧を目指すのではなく、続けられることから始めてみましょう。

痛みと、どう付き合っていけばいい? 長引く痛みは、一人で抱え込まず、からだの状態を見てくれる専門家に相談するのも一つの方法です。からだ鍼灸整骨院など、体の状態を確認しながら相談できる場を活用するのも、続けるための選択肢です。続きや新しい記事は、LINEでお届けします。

参考にした情報

(出典の確認日:2026年6月24日。URL・版・最終更新日の記録は research/sources/chronic-pain-why.md。)


※この記事は、一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。効果や感じ方には個人差があります。痛みやしびれが強い、長く続く、急に悪化したなどの場合は、自己判断せず、医療機関や専門家にご相談ください。

よくある質問

慢性痛は気のせいなのでしょうか?

いいえ。神経や脳の痛みの感じ方の変化など、からだの仕組みが関わると考えられています(原因の断定や診断はできません)。

病院に行く目安はありますか?

しびれや力の入りにくさ、急な悪化、発熱や原因不明の体重減少をともなう場合などは、自己判断せず医療機関にご相談ください。

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