筋肉・神経・痛みの基礎
画像に異常がないのに痛いのはなぜ?レントゲン・MRIと痛みの関係
この記事でわかること
- 画像の変化(椎間板の変性など)は痛みのない人にもよく見られ、必ずしも痛みの原因とは限りません
- 痛みは組織の傷だけで決まらず、神経・脳の感じ方や生活の状況も関わる「体験」です
- 「異常なし」は、重い病気が隠れていないという安心材料でもあります
監修:長野圭佑 (柔道整復師・鍼灸師 / からだ鍼灸整骨院)
専門家の確認を経て公開しています。 編集:100年動くからだラボ編集部
「検査では異常なしと言われたのに、痛みは続いている」。そんな経験に、戸惑ったり不安になったりする方は少なくありません。「気のせいなの?」「どこも悪くないのに、なぜ?」——。
この記事では、画像検査(レントゲン・MRI)と痛みの関係を、痛みの科学からやさしく整理します。結論を先にいえば、「異常なし」でも痛みは起こり得ますし、それは決して気のせいではありません。なお、ここで紹介するのは一般的な情報であり、診断ではありません。
「異常なし」なのに痛い、はよくあること
まず知っておきたいのは、これはめずらしいことではないということです。とくに腰や首の痛みでは、画像にはっきりした原因が写らない「非特異的」なものが大半とされています。
そして大切なのは、「異常なし」は悪い知らせではない、という点です。それは、骨折やがんなど、急いで対応すべき重い病気が隠れていないという、ひとつの安心材料でもあります。
画像の「変化」は、痛みのない人にもよくある
レントゲンやMRIで見つかる「変形」「椎間板の変性」「ヘルニア」などは、痛みのない人にもよく見られるものです。しかも、年齢とともに増えていきます。
無症状の人を調べた研究のまとめでは、椎間板の変性は**20代で約37%、80代で約96%**に見られたと報告されています。つまり、こうした変化の多くは「加齢にともなう自然な変化」に近く、必ずしも痛みの原因とは限らないのです。
痛みは「組織の傷」だけで決まらない
では、傷が写らないのになぜ痛むのでしょうか。
いま国際的に共有されている考え方では、痛みは「組織の傷の知らせ」であると同時に、**脳と神経が「これは危険かどうか」を判断して生み出す“体験”**だと整理されています(国際疼痛学会 IASP)。
痛みが長く続くと、神経や脳が痛みの信号に敏感になりやすいことも知られています(中枢性感作)。これは、火災報知器の感度が上がりすぎて、煙が少なくても大きく鳴ってしまうような状態にたとえられます。だから、組織の傷が落ち着いたあとも、痛みが続くことがあるのです。
さらに、睡眠・気分・ストレス・生活の状況も痛みの感じ方に関わります(くわしくは 慢性痛はなぜ続く? もご覧ください)。
では、どうすればいい?
画像に頼りすぎず、からだ全体と暮らしを見ていくことが回復を支えると考えられています。
- 痛む場所だけでなく、動き・睡眠・気分・生活までふくめて見直す。
- 過度な安静を避け、痛みと相談しながら少しずつ動く(腰痛は安静より動く も参考に)。
- 痛みの仕組みを知ること自体が、過度な不安をやわらげる助けになるとされています。
受診の目安(こんなときは医療機関へ)
「異常なし」でも、次のようなサインがあるときは、あらためて医療機関にご相談ください。
- 手足のしびれや、力が入りにくい・感覚の異常が広がる
- 痛みが急に強くなる、夜眠れないほど痛む
- 発熱や、原因のわからない体重減少をともなう
- 排尿・排便のトラブルをともなう
これらは、別の原因がかくれていないかを確かめるためのサインです。
まとめ
- 「異常なし」でも痛みは起こり得て、気のせいではありません。
- 画像の変化は痛みのない人にもよくあるもので、必ずしも痛みの原因とは限りません。
- 痛みは神経・脳の感じ方や生活も関わる「体験」。からだ全体と暮らしを見て、少しずつ動くことが回復を支えます。
痛みの感じ方には個人差があります。一人で抱え込まず、必要なときは専門家と一緒に向き合っていきましょう。新しい記事は LINE でお届けします。
参考にした情報
- 国際疼痛学会(IASP)「痛みの定義(2020年改定)」( https://www.iasp-pain.org/publications/iasp-news/iasp-announces-revised-definition-of-pain/ )
- Brinjikji W ほか「Systematic Literature Review of Imaging Features of Spinal Degeneration in Asymptomatic Populations」AJNR, 2015(無症状の人の画像所見:椎間板変性は20代約37%→80代約96%)( https://www.ajnr.org/content/36/4/811 )
- Woolf CJ「Central sensitization: implications for the diagnosis and treatment of pain」Pain, 2011( https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20961685/ )
- NICE「Chronic pain (primary and secondary) in over 16s」NG193・2021( https://www.nice.org.uk/guidance/ng193 )
(出典の確認日:2026年6月29日。一次情報の最終確認は監修時に行う。)
※この記事は、一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療を行うものではありません。効果や感じ方には個人差があります。しびれや力の入りにくさ、急な悪化などがあるときは、自己判断せず、医療機関や専門家にご相談ください。
よくある質問
検査で「異常なし」と言われたのに痛いのは、気のせいですか?
いいえ、気のせいではありません。痛みは組織の傷だけで決まるわけではなく、神経や脳の感じ方の変化、姿勢や動きのクセ、睡眠や気分なども関わる「体験」です。画像に写りにくい要因が関わることもあると考えられています。
画像で「変形」や「ヘルニア」があると言われました。それが痛みの原因ですか?
必ずしもそうとは限りません。こうした変化は痛みのない人にもよく見られ、加齢にともなって増えます。ある研究のまとめでは、無症状の人でも椎間板の変性が20代で約37%、80代で約96%に見られたと報告されています。
では、どうすればいいですか?
痛む場所だけにとらわれず、動き・睡眠・生活までふくめて見直し、無理のない範囲で動きを取り戻していくことが回復を支えると考えられています。ただし、しびれや力の入りにくさ、急な悪化などがあるときは医療機関にご相談ください。
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